おたくはどちら

つれづれ

22.シェリーに口づけ

『八本脚の蝶』(二階堂奥歯)を読んでいる。
http://oquba.world.coocan.jp/oqsearch.html


古生物やコスメや哲学を好んでいる、ある女性の日記。
奥歯氏に飲み込まれないようにジタバタしながら読み進める。ちょくちょくwebのハイパーリンクが貼られているが、どれもこれもが404 Not Foundで少し切ない。

恋愛・結婚・家庭・育児そしてそれらを包み込む生活に関して、岡田斗司夫の『フロン』(海拓社)ほど示唆に富みまた実践的な本があるでしょうか!
もうこれから私は澁澤龍彦『快楽主義の哲学』(理念)に加え、『フロン』(実践)を手引きとして生きていきます!
(それでいいのか?)
—『八本脚の蝶』 2001年11月30日(金)


どこかで澁澤の名前を聞いたなぁと思って、Safariに打ち込んでWikipediaを見る。この人は小説家で、矢川澄子という訳者と結婚したらしい。これだ。
一時期『不思議の国のアリス』をトチ狂ったように読んでいた(原語版+別訳者の日本語版3冊)。矢川澄子は新潮社から出版された『アリス』の訳者。訳者について調べている時、目にしたのを覚えていたらしい。

好きな本を3冊選べと言われたら私は次の本を選ぶ。
ヴィトゲンシュタイン論理哲学論考
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』
ポーリーヌ・レアージュO嬢の物語
—『八本脚の蝶』 2002年5月23日(木)


ヴィトゲンシュタインを『素晴らしき日々』というエロゲで知ったオタクには、『論理哲学論考』はぶっちゃけよく分からなかった。「ものごとの枠組み」をシステマティックに「あれはこうなのでそうなりますよね」、と分類していく本であることをおぼろげに理解する程度だった。そういう本を奥歯氏は好きだ、というのだから、素直にすげえ、と感心する。


『荒ぶる季節の乙女どもよ。』を観るとき、登場人物の愛読書として紹介されていた『十二国記』や『眼球譚』を読んだ。本自体も面白かったし、『荒乙』の真面目キャラがファンタジーを好むことに驚いた。『アクタージュ』作中で描かれた『銀河鉄道の夜』の演劇とその解釈は、同じく『銀河鉄道』をモチーフとして取り入れている『すばひび』の掘り下げでもあった。


『八本脚の蝶』にはたくさんの固有名詞が出てくる。小説。映画。漫画。哲学書。それらの作者、訳者、出版社。コスメメーカー。ファッションブランド。バー。人形。ぬいぐるみ。絵画。個展。博物展。
奥歯氏の語るヴィトゲンシュタイン澁澤龍彦が、自分で触れてきたものと地続きであることに不思議な感覚を覚える(「現実感に対する恐怖」だとか「モチーフが収束していく快感」だとかがごちゃまぜないまぜになって「不思議」になっているんだと思う)。


たぶん、これらのパーツをひとつひとつ読み込んで咀嚼するには大変な時間が必要だけれど、それをつなぎ合わせてようやくこの日記の景色の片鱗を見れるんだろう。


それはそうと、インターネットのデータは大半が企業の一存でバッサリ失われてしまうので(直近だとyahooジオシティーズとかね)、クソデカミラーサーバーが必要じゃないか?どうにかなんないかなぁ。